2010年 03月 19日

事例研究[2009年11月期-T&Cホールディングス]

平成21年11月期の株式会社T&Cホールディングスの内部統制報告書では、次のように記載されていました。

3 【評価結果に関する事項】
当社は、当事業年度末日時点において当社グループの財務報告に係る内部統制について評価手続の一部が実施できませんでしたが、当該一部を除き当社グループの財務報告に係る内部統制は有効であると判断致しました。
 一部実施できなかった評価手続は、連結子会社Financial China Information & Technology Co., Ltd.の財務報告に係る内部統制の評価手続であります。
 当該評価手続を実施できなかった理由は、当社において平成21年10月30日に同社の全出資持分を譲渡する契約を締結致しましたが、中国当局による認可が当事業年度末日以降となったこと等により、当事業年度末において同社を引続き当社の連結子会社として取扱うこととなった結果、時間的な制約により評価手続を完了することが出来なかったためであります。
 一方、財務報告に係る内部統制の整備及び運用の重要性は認識しており、今後は内部統制評価計画を慎重に策定し、事業年度末日時点における全ての評価対象会社の評価手続を完了できるよう体制を改める方針であります。

子会社における内部統制の有効性評価について、会社は外的事情により実施できなかったため、当該部分を除いた範囲について有効であったと意見表明しています。

それに対して監査人である東陽監査法人は、平成22年2月22日に次のような理由をもって「やむを得ない事情には該当しない」と述べる一方で、株式会社T&Cホールディングスの財務報告に係る内部統制自体については有効であるとの結論を付しています。

<内部統制監査>
当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第2項の規定に基づく監査証明を行うため、株式会社T&Cホールディングスの平成21年11月30日現在の内部統制報告書について監査を行った。財務報告に係る内部統制を整備及び運用並びに内部統制報告書を作成する責任は、経営者にあり、当監査法人の責任は、独立の立場から内部統制報告書に対する意見を表明することにある。また、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性がある。
当監査法人は、下記事項を除き、我が国において一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の監査の基準に準拠して内部統制監査を行った。財務報告に係る内部統制の監査の基準は、当監査法人に内部統制報告書に重要な虚偽の表示がないかどうかの合理的な保証を得ることを求めている。内部統制監査は、試査を基礎として行われ、財務報告に係る内部統制の評価範囲、評価手続及び評価結果についての、経営者が行った記載を含め全体としての内部統制報告書の表示を検討することを含んでいる。当監査法人は、内部統制監査の結果として意見表明のための合理的な基礎を得たと判断している。
 

  会社は、内部統制報告書に記載のとおり、連結子会社Financial China Information & Technology Co., Ltd.の財務報告に係る内部統制を当事業年度末日現在の内部統制の評価から除外しているが、やむを得ない事情に相当するとは認められなかった。

  当監査法人は、内部統制報告書において評価範囲外とされた上記事項を除き、株式会社T&Cホールディングスの平成21年11月30日現在の財務報告に係る内部統制は有効であると表示した上記の内部統制報告書は、我が国において一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠して、財務報告に係る内部統制の評価について、すべての重要な点において適正に表示しているものと認める。なお、内部統制報告書において評価範囲外とされた上記事項の連結子会社については、連結財務諸表に反映されており、これによる財務諸表監査に与える影響はない。

一般に、会社が評価範囲を限定した場合、監査人の判断としてはそれが「やむを得ない事情」によるものであると判断した場合には、内部統制監査上の監査意見を適正と表明することになりますが、「やむを得ない事情」に該当するか否かについては会社および監査人の判断に依存します。

今回の事例では、当初売却を予定していた子会社株式について中国当局による認可が下りないまま期末を迎えていることによって、評価を実施できなかったと会社は説明をしています。

監査人は当該状況を踏まえたうえで、当該事例は「やむを得ない事情」には該当しないと判断しましたが、範囲限定を付した適正意見を付しています。一般に「やむを得ない事情」によらず一部の評価を実施できなかった場合、会社が実施した内部統制の有効性評価が有効であるとの合理的基礎が得られないことを理由として意見不表明とすることが多いなかで、今回はその影響範囲が全体から比較すると相対的に小さかったことから適正意見を付したと想定することもできます。

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